カテゴリ『野良カート』
野良カート 序
まずは下の写真を見てほしい。
一見なんの変哲もない写真のように見えるのだけれど、ほら、そこのアレ。
真ん中に見えるアレ。
スーパーとかでほら、アレするやつです。
あのー、子供が、乗ったりして、いや、本当は奥さんが白菜とかを運ぶんだけれど、ちなみに私西田は小さい頃スーパーに連れて行かれると、このアレの下腹部?ちゃうか、下顎の部分ってえの?ビールのケースとか入れるところ、大抵そこに積載されていたもんです。何が楽しいんだか、「ワン!」とか言って。
ワン!
ともあれこれ、正式名称はよくわからんのだけれど、とりあえず一般的にはカートと呼ばれているらしい。
で、そのカート。
写真のカートが置かれている駐車場は、当時の私が住んでいた家の裏手にあって、カートが置いたぁるということは必然的に我が家の裏手にスーパーなんぞがあるかというと、それがないのである。
ほんだら、ほんだらこれは、このカートはどこから来やったん?と思うでしょう?
見つけた当時、私も全く見当がつかなかった。しいて言えば結構大きめの道を隔てた向こう側、商店街を突っ切った先にスーパーがあるので、ここから来たの?と考えるのは正しい。正しいかもしれんが、それにしたってかなり遠い。行けなくはないが、ナシな範囲である。
まあ、ナシを無理矢理アリとして。それにしたって、このカートをばここまでせっせと運んできた人の頭の中が非常に気になるところ。
たとえば...
・うっかり?
ちょっとうっかりってレヴェルじゃないよね。うっかり信号のある道渡るかっての。
・袋に入れるのめんどいから。
まあ、気持ちはわからんでもない。荷物入れ替えたり、ビニールに入れたり、卵を割ったり、パンがくしゃってなったり、しんどいな、と思うのもわかるが、カートを押したまま信号渡ったりするほうが半端なく面倒だと思わなかったのかしら。
・物理的に手では持てない量だった。
考えて買え。
いずれの理由にしてもどうもしっくりこないのである。そのうちこのカートみずからが意思をばもってここまで到着したんでは、なんていう素敵かつ無益な妄想に浸りはじめたりして困る。ああ、無益は頭っから無益でしたね。はい。
とまれ、まあ家の近所ということもあるのでそのカートを見かけるたびに、コイツがここにたどり着いた過程を想像し
てはモヤモヤ感を味わっていたのであるけれど、当のカートは三日後の朝にこつ然と姿を消してしまった。
三日で消える、なんてのはまるで幽霊とか妖怪の類いにも思えてくる振る舞いじゃないですか。「辻にカートが現前せらるる事」なんて今昔に載っていても不自然ではない気がする。実に味わい深い野郎である。
さて後日、当然ながらこんな味わい深いことを自分個人の経験として放っておく事はできず
知人等の会話のネタとして方々で話をしたのであるが、その際便宜上、当のカートの事を「野良カート」と呼ぶことにしたのが事の始まりだったのだったのだった。
驚いた事にこれが前置きなのである。いやはや。
つづく
...かも